近世最大の砂防施設「砂留」

 江戸時代の砂防堰堤(砂留)が数多く現存している希な地域が 広島県福山市。

 地域コニュニティーによって保存整備活動し、一般向けの見学会やウォーキングツアー開催など「地域資産」として啓蒙活動を行っておられる福田地区で、岡山大学大学院環境生命科学研究科准教授 樋口輝久氏をお呼びしての講演会が開かれました。 


 昨年7月豪雨では、西日本を中心に浸水害、土砂災害が発生し、甚大な被害がもたらされた中で、砂留が施された地域では数か所斜面崩壊や一部破損が発生するものの、下流域への被害がなく、砂留効果が確認されたそうです。


 2009年から2014年にかけて住民の方たちによって発見された旧芦田町福田の別所地域を含めると、福山市内に合計85基を超える砂留が確認されています。 



 砂留とは、砂を留める=近世の石造砂防ダム、住民DIYによる谷止工をいい、 全国で現存しているのは、広島県三原市、兵庫県太子町、京都府亀岡市、高知県土佐市、福岡県朝倉市だけ。 

 江戸時代に人口が急増し、森林伐採や放牧によって荒廃した山林から土砂が流出。 下流域治水のため森林開発を制限させる法律(=『諸国山川掟』)が幕府発令されるも、ハードなインフラ対応を必要としたことで砂留の築造がなされたのが始まりです。 

 福山で代表的な砂留は、 別所、大谷、堂々川、深水、など。 


 砂留技術は、近傍から採れる石材を 適切に切り出し、斜面を滑らせて運ばれたといわれる石を積み重ねて築かれていることから、 江戸時代の城郭石垣にも由来するような、高度技術を身に着けた石工集団が存在し、時代によって石の積み方が異なると推定されています。 


 講演会に参集された地域の皆さんにとって、砂留の魅力は、まちづくりコミュニティーの活性をもたらしていました。 砂防としての使命を担いながら、福田史蹟探訪会が始めた保護活動はまちづくり推進委員会に引き継がれ、学区民全体で古人の叡智の復活と未来への伝達に取り組みを進められているそうです。 


 砂留オタクのごとくプロモーションされた樋口准教授も、本当に砂留がお好きで、遺跡から実用インフラとして、見学や研究に励まれているんだなと感じました。 


 見て、作って、暮らしに役立てる。 


 地域資産とは、” 使える FAN=面白いもの ” なのですね。    

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